美容というと、お肌やボディラインを気にかける方は多いですが、私はそれと同じくらい「姿勢」が大切だと考えています。ただ、街で周りを見ても、「正しくない姿勢」の方がほとんど、というのが実情です。私はセラピストスクールの講師もしていますが、美容のプロであるはずの彼女たちも、姿勢の悪い生徒が少なくありません。では、なぜ「正しくない姿勢」の方が多いのでしょうか?
「正しい姿勢」とは
私は、「きれいな姿勢 = 正しい姿勢」とは、下記のような姿勢と考えています。
・立っているときに、頭のてっぺんから足まで軸がある
・座っているときに、頭のてっぺんから仙骨(※)まで軸がある
※仙骨とは、上半身と下半身をつなぐ部分にあり、背骨のいちばん下にある骨です。
インナーマッスルが身体の軸を作る
人間の身体は、骨が土台になっています。しかし、骨は自力で動くことはできません。骨を支えて、動かしているのが、「インナーマッスル」という筋肉です。
私たちが、普段お肌の上から見ている筋肉は、「アウターマッスル」といい、運動などによって鍛えられます。
その一方で、インナーマッスルは、その言葉の通り、深い部分にある筋肉で、なかなかご自分で感じることはできません。
このインナーマッスルが伸縮することによって、骨も一緒に動かされます。
私たちの身体の軸は、インナーマッスルによって作られているのです。
つまり、全身のインナーマッスルがバランスよく使われて、身体に軸がある状態が、「正しい姿勢」といえます。
「使う筋肉」と「使わない筋肉」が軸の崩れに
本来、私たちの身体は、全身のインナーマッスルを使って、身体を動かすものです。
しかし、身体の動かし方に取扱説明書はなく、どこかで必ず自己流が入ってしまうものです。
すると、ある部分のインナーマッスルは使うが、ある部分はほとんど使われない、といったことが起きるようになります。
それが、「正しくない姿勢」へとつながってしまうのです。
多少極端な例えですが、なにか物を取るときのことを想像してみてください。
下記のような取り方は自然ですよね。
では、物と少し距離があったときはどうするでしょうか?
このように、かがむようにして上半身を前に出して、物を取ることはありませんか?
違和感を抱く方は少ないでしょう。
ただ、少し前に出たり、腕の角度を変えたりすれば、腰を曲げる必要もないはずです。にもかかわらず、このような取り方をするのは、物を取るときの腕の角度が、ご自分の中で決まっているのでしょう。
A) と B) の写真を見比べてみてください。腕の角度は、ほとんど同じです。腰を曲げることで、長さ・高さを調整しています。
つまり、肩の可動域を動かさず、肩の関節(インナーマッスル)を使っていません。
筋肉は使わなければ、落ちてしまいます。肩の関節を使っていなければ、そこのインナーマッスルは使われませんから、次第に動きづらくなってしまいます。
手は、肩から手の先までが、「手の軸」となります。しかし、肩の関節が動きづらい状態では、その軸がなくなっているといえます。
一部分の軸の崩れが身体全体に
では、手の軸がなくなると、どうなるのでしょうか?
肩の関節が固定された状態で、手を左右に動かすと、「肩甲骨」が引っ張られるようになります。
肩甲骨は、胸部の肋骨とつながっています。すると、その影響で、「肋骨」が下がってしまいます。
肋骨が下がると、上半身が前面に倒れてきますので、「背骨」が丸まります。
そして、前面に倒れた上半身のバランスを取ろうと、「お尻」は重心を後ろに持っていきます。
すると今度は、お尻の重心が後ろにありますから、「足」が重心を前に持ってきて、バランスを取ろうとするのです。
このとき、全身をみてみると、それぞれの部位の重心は下記のようになっています。
・上半身:前
・お尻:後ろ
・足:前
いびつですね。これでは、とても「正しい姿勢」とはいえません。
まとめ
このように、私たちの身体は、部分ごとにバランスを取ろうとする働きがあります。
例えば、ロボットであれば、一ヶ所が故障してしまうと、動かなくてなってしまいます。ただ、人間の身体は違います。どこかを痛めても、その他の筋肉を使い、身体を動かすことができます。
しかし、それが結果的に「正しくない姿勢」につながります。一部分の軸の崩れが、全身の軸の崩れに波及してしまうのです。
姿勢の悪さも、元をたどっていくと、実は小さなことが原因なのかもしれません。それだけに、「正しい姿勢」を維持するのは、難しいことなのです。
(取材・文:「キレイの先生」編集部)