「キレイの先生」編集部です。
今回は、青山ダンスクラフト の青山 暁子 先生に取材させていただきました。
青山 先生は、ピラティスなどのインストラクターをされていらっしゃいます。
ピラティスは、ただエクササイズをするだけではなく、呼吸を大切にするといいます。
そこで、今回のテーマは、「呼吸」です。
こちらは、その後編です。
前編では、呼吸が浅くなることで、身体にも悪い影響があることをまとめました。
深い呼吸は、美容にも効果があります。
ピラティスの呼吸法は、「胸式呼吸(きょうしきこきゅう)」という深い呼吸といいます。
この後編では、胸式呼吸のやり方について取り上げます。
前編をまだご覧になられていない人は、この後編の内容にも関係しているので、是非そちらからお読みいただきたいと思います。
青山 先生の「浅い呼吸」の記事
目次
胸式呼吸とは
・腹式呼吸について
・胸式呼吸と腹式呼吸
・胸式呼吸のメリット
胸式呼吸のやり方
・方法1. 肋骨の前面を開く
・方法2. 肋骨の背中側を開く
・方法3. 肋骨の左右を開く
本日のキレイの先生
青山ダンスクラフト
青山 暁子 先生
「キレイの先生」編集部
胸式呼吸とは
ピラティスの呼吸法は、「胸式呼吸」というのですよね。
それは、どんな呼吸法なのでしょうか?
呼吸を行う肺は、とても大きな臓器で、肋骨(ろっこつ)の中に左右2つあります。
肋骨の中には、生きるためにもっとも大切な臓器といえる「心臓」と「肺」があります。
肋骨は、例えると「ケージ(檻)」になっていて、それらの臓器がダメージを受けないように守っています。
肋骨が肺や心臓を守る
下の画像のように、肺や心臓は、肋骨の中にあって守られています。
呼吸をするときには、この硬い肋骨が上下左右に広がったり縮んだりして動くことで、中にある風船のような肺を膨らませたり小さくしたりすることができます。
そのため、肋骨の動きが悪くなると、十分な呼吸が行えなくなります。
例えば、猫背の姿勢になっていると、胸が閉じた状態で、肋骨の動きが制限されます。
すると、肋骨を広げたくても、広げられません。
それによって、深い呼吸ができなくなり、浅い呼吸になってしまうのです。
胸式呼吸は、肋骨を動かすことで、肺を横に膨らませる呼吸法のことをいいます。
深い呼吸を行うためのトレーニング法です。
肋骨を動かす「胸式呼吸」
先程、肋骨の写真をご覧いただきました。肺は、肋骨の中にあります。肋骨の動きが悪くなっていると、肺が息を吸って膨らもうとしても、膨らみづらくなってしまいますよね。胸式呼吸は、肋骨を動かすことによって、深い呼吸を行います。
腹式呼吸について
ちなみに、呼吸法には、「腹式呼吸(ふくしきこきゅう)」という方法もあると思います。
これは、どんな呼吸法なのですか?
胸式呼吸とは、何が違うのでしょうか?
胸式呼吸が、肋骨を動かす呼吸法なのに対して、腹式呼吸は、肺の下にあるドーム型の「横隔膜(おうかくまく)」という呼吸のための筋肉を動かす呼吸法です。
息を吸うと、横隔膜の位置が下がることによって、肺が下の方にも膨らみます。
そして、息を吐くと、横隔膜は上がります。
呼吸と横隔膜
呼吸と、横隔膜の動きをまとめると、下のようになります。
■ 息を吸う
・横隔膜 → 下がる
・肺 → 大きなって下に広がる
■ 息を吐く
・横隔膜 → 上がる
・肺 → 小さくなって上に縮む
そのため、横隔膜が衰えて十分に動かなくなると、肺に空気が入りづらくなります。
腹式呼吸は、肺の下の方が膨らむように横隔膜を上下に大きく動かしながら、リラックスした呼吸を行うトレーニング法といえます。
ちなみに、呼吸筋は、自律神経系の中で、唯一、自分でコントロールすることのできる筋肉です。
例えば、胃腸や心臓の動きを、自分でコントールすることはできません。
呼吸筋も、普段は自然に呼吸して動いていますが、意識的に息を止めたり、呼吸のスピードや量を変えたりすることで、動きをコントールすることができます。
胸式呼吸と腹式呼吸
「胸式呼吸」と「腹式呼吸」は、どちらも、深い呼吸をするための呼吸法だったのですね。ただ、アプローチする場所に、違いがあるようです。
・胸式呼吸:「肋骨」を動かす、肺を「横」へ膨らます
・腹式呼吸:「横隔膜」を動かす、肺を「下」へ膨らます
胸式呼吸と腹式呼吸
日常の活動時の自然呼吸は、「胸式呼吸」です。
つまり、ピラティスで使われる胸式呼吸は、ナチュラルで分かりやすい呼吸法です。
そして、胸式呼吸で肋骨を動かして深い呼吸を行えるようになると、結果的に横隔膜の可動域も広がります。
そうなのですか!?
私は、「胸式呼吸」と「腹式呼吸」は、まったくの別物だと思っていました。
ただ、胸式呼吸で深い呼吸が行えるようになると、腹式呼吸も行いやすくなるのですね。
胸式呼吸と腹式呼吸
胸式呼吸が腹式呼吸も行いやすくなるというお話は、とても意外でした。ただ、考えてみると、どちらの呼吸法も、深い呼吸をするためのものです。そこに至る過程が違うだけで、胸式呼吸ができるようになると、腹式呼吸にもなるのも、「たしかに…」という感じです。下のようなイメージですね。
1. 胸式呼吸で、肋骨を動かす
2. 息を吸ったときに、肺を大きく動かせるようになる
3. 肺の下にある横隔膜も、自然と動くようになる
4. 腹式呼吸も行いやすくなる
また、胸式呼吸と腹式呼吸の違いとしては、「胸式呼吸」が、筋肉を動かすときや、仕事や運動など活動時の呼吸で、「腹式呼吸」が、リラックスしたときや、睡眠時の呼吸ということもできます。
胸式呼吸のメリット
胸式呼吸は、「インナーマッスル(深層部にあって鍛えにくい筋肉)」に働きかけます。
つまり、「体幹」を鍛える効果もあります。
体幹は、例えると「筋肉のコルセット」で、その支えによって、姿勢を保つことができます。
ただ、体幹が衰えて、身体を支えられなくなると、姿勢が悪くなります。
そのため、胸式呼吸で深い呼吸を行って、体幹を鍛えることで、姿勢の維持にもなります。
そして、コルセットを閉じるように、ぽっこりとしたウエストを引き締める効果も期待できます。
例えると、ベルトの穴を、ひとつ、ふたつ、短く閉めるようなイメージです。
先程説明した腹式呼吸のトレーニングでは、横隔膜を大きく下げるため、行き場のなくなった内臓が外に膨らむために、腹部が広がります。
ピラティスの胸式呼吸では、横隔膜を働かせながらも腹部のコルセットをゆるめることはしません。
そのため、体幹が強化されるのです。
ピラティスは、姿勢が良くなって、ダイエットの効果もあるという話を聞いたことがあります。
それは、ピラティスの呼吸法である「胸式呼吸」も、大きく関係していたのですね。
胸式呼吸の効果
胸式呼吸の効果は、姿勢の改善やダイエットだけではありません。青山 先生の前編の記事で取り上げましたが、呼吸は、酸素を全身の細胞に送る役割があります。細胞が働くためには酸素が必要なため、呼吸が浅くなって酸素が不足していると、身体の不調や病気の原因にもなります。
そのため、胸式呼吸で深い呼吸が行えるようになることは、身体のすべてにとって良いといえそうです。
胸式呼吸のやり方
どのようにすれば、胸式呼吸を行えるようになるのでしょうか?
自宅でもできるようなことはありますか?
肋骨の前後左右を開いていくような方法があります。
方法1. 肋骨の前面を開く
まずは、後ろで手を組みます。
その手を下の方に引っ張り、肩甲骨を寄せていきながら、ゆっくりと鼻から息を吸います。
そのとき、視線と胸を斜め上の方に向けていきます。
胸を縦に広げながら前面に空気を入れていくようなイメージです。
そして、口からゆっくりと息を吐きながら、身体を元に戻しゆるめます。
姿勢が猫背になっていると、胸が閉じて、肋骨が動きにくい状態です。
胸の前面を広げるようにたっぷりと呼吸を入れながら、猫背も解消しましょう。
方法2. 肋骨の背中側を開く
次は、手を前に組み、猫背のように背中を丸めて下を向きます。
肋骨の背中側を押し広げるようなイメージで、たっぷりと鼻から息を吸います。
そのまま口からゆっくりと息を吐き出します。
方法3. 肋骨の左右を開く
最後は、片手で脇の肋骨を押さえて、もう片手で頭を押さえます。
そして、頭を押さえている方の脇を縦に広げていくようにしながら、鼻からゆっくりと息を吸い込みます。
広がった肋骨の隙間に、空気を送り込むイメージです。
このときの注意は、身体を倒すのではなく、肋骨を縦に広げていくイメージで、肘を天井の方へ上げていきます。
そして、口からゆっくりと吐きながら、身体を戻します。
つまり、肋骨を、左右前後すべての方向から広げて、そこに空気を入れていくのですね。
はい。
それぞれを、ゆっくりとしたペースで数回行ってください。
例えば、デスクワークの合間に、これらを時々行うだけでも、胸を開けるようになります。
まとめ
私は、青山 先生に取材させていただくまで、「胸式呼吸」と「腹式呼吸」は、まったく別物だと思っていました。
ただ、どちらの呼吸法も、深い呼吸を行えるようにするためのトレーニングです。
胸式呼吸ができるようになれば、腹式呼吸も行いやすくなります。
そして、青山 先生によると、胸式呼吸は普段の活動時のナチュラルな呼吸のため、「深い呼吸をするにはトレーニングしやすい」とのことでした。
今回教えていただいた胸式呼吸のやり方は、肋骨を、前後左右すべての方向で開くようにするのがポイントです。
私も取材以降、パソコン作業の合間に、肋骨を広げるエクササイズを時々行うようにしています(エクササイズと呼ぶ必要もないくらい、簡単な内容ですよね)。