「キレイの先生」編集部です。
ダイエットにはこんな食べ物がいい、美容にはあんな食べ物がいい。
ちまたで話題になっている食事法、つい飛び付いてみたくなりませんか?
それが自分の体質に合うかどうかなんて、これまで考えたことがありませんでした。
今回の取材は、そんなことを考えるきっかけになりました。
話をお聞きしたのは、日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医・日本抗加齢医学会 専門医
のDr.Rikaこと、小笠原 里香 先生です。
「どんな食事法をするにも、まずは自分の体質を知ることが大切」、それがテーマです。
目次
ダイエット = 食事法
― 小笠原 先生、本日はよろしくお願いします。現在、「ダイエットにはこんな食事法がいい!」といったようなものが色々あると思います。勉強不足で申し訳ないんですが、例えば「MEC食」、これは私も名前は聞いたことがあります。
ダイエットという言葉は、「痩せる」というイメージが強いかもしれませんが、元々は「食習慣、食事方法」という意味があります。ですので、ダイエットは本来、「どういう食事をするのか」ということになります。
その食事方法のひとつに、糖質制限がありますが、これは、糖尿病の方向けに始まりました。ごはん、パン、麺類など、糖質の多い食べ物を控える食事方法です。その他にも、イモ類や、人参・大根といった根菜類も、糖質の多い食べ物です。豆類も糖質は多いですが、豆腐は大丈夫といったようなこともあります。これらを控えて、肉や魚、卵のタンパク質や、油分も良質なものを摂るのが、糖質制限です。
「MEC食」も、糖質制限の一種です。
― ダイエットは「食事法」という意味があったんですか!? 私なんかも、ダイエットというと「痩せる」というイメージが強いんですが、それも本来の意味から少しひとり歩きをしているのかもしれませんね。「MEC食」とは、どんな食事法なのでしょうか?
「MEC食」は、3つの食べ物の頭文字を取っています。「MEET(肉)」、「EGG(卵)」、「CHEESE(チーズ)」です。これらを、肉200g、卵3個、チーズ120g、毎日食べる食事法をMEC食といいます。それをしっかり食べれば、他のものもある程度食べても大丈夫です。
ただ、ひとつ注意点があって、「カムカム30」といって、一口入れたら30回噛むようにします。
― お肉に卵、チーズ! どれもコレステロールが高そうなイメージで、それを食べようという食事法があることに驚きです。
「分子整合栄養医学」という分野があるのですが、そこでも卵は推奨されています。タンパク質の摂取の効率が良いんですね。アミノ酸スコア*1、プロテインスコア*2ともに100の卵に比べて、牛肉はアミノ酸スコアが100ですが、プロテインスコアは80です。人は体重の0.1~0.2%のタンパク質を補給すべきと言われており、体重50kgの方の場合、1日のタンパク質摂取量は50~100gが目安です。牛肉を200g食べても、身体に吸収できるのは約30gとなり、最低必要量の50gのタンパク質を摂取するには、牛肉330gが必要となります。それに対して、卵は約7個です。
*1 アミノ酸スコアとは
特定の食品に対し、窒素1gあたりに占める必須アミノ酸が基準値と比較して、どれだけ含有されているかを評価したもの。
*2 プロテインスコアとは
特定の食品に含まれる必須アミノ酸が、人体が求める必須アミノ酸の比率と比較して、どの程度含まれているかを評価したもの。
私自身、「卵はコレステロールが高くなるから」と10数年間、ほとんど食べていませんでしたが、分子整合栄養医学を学んでから毎日1~2個卵を食べるようになりました。
しかし、それによって蕁麻疹、アトピー性皮膚炎が出てしまったんです。
― え、そうなんですか?
元々、子供のときに卵のアレルギーがあったんですね。それまでほとんど食べていなかったのを、急に食べるようになって出たんだと思います。私には合っていなかったんです。
日本人は真面目でストイックなので、例えば「ココアがいい」、「朝バナナがいい」、「MEC食がいい」となると、一斉にそちらに向かうイメージがあります。
ただ、どんな食事法でも、万人に合うものはありません。
アレルギー検査のすすめ
― アレルギーのお話が出ました。私も花粉症に苦労していて、これもアレルギーだと思います。アレルギーには、どんなものがあるんでしょうか?
そもそも、アレルギーは大きく二つに分けられます。「即時型」と「遅延型」です。
即時型は、食べて5~10分で反応がでるアレルギーのことをいいます。花粉症やそばアレルギーなどが、これに当たりますね。それに対して、遅延型は反応が出るまでタイムラグがあります。時には、食べてから1週間後に反応が出ることもあります。
日本人の遅延型食物アレルギーの3大原因といわれるのが、「卵」、「乳製品」、「小麦」です。
― 遅延型のアレルギーというものもあるんですか。反応が出るのにタイムラグがあると、その症状が何の原因なのか、突き止めづらそうです。自分がどんなアレルギーを持っているのか、調べることはできるんでしょうか?
はい。即時型アレルギーの検査は、保険の適用が効きます。皮膚科やアレルギー科、耳鼻科などの保険医療機関で受けられます。しかし、遅延型アレルギーの検査は少し特殊で、アメリカのラボへ受注し、自費の検査になりますので、受けられる医療機関は限られてきます。
遅延型アレルギーの検査には、2種類あります。それが、「IgG」と「IgA」というものです。IgGは、蕁麻疹・アトピー性の皮膚炎といったお肌のトラブル、頭痛などの症状が出るアレルゲン(食べ物)を検査するものです。IgAでは、涙や鼻水といった粘膜症状の原因を検査します。胃腸に症状が出るようなアレルギーも、このIgAに含まれます。
遅延型アレルギーを検査するときは、この2つともお受けになるのがベストです。それは、IgGでは陰性でも、IgAの方で陽性という食べ物も多いのです。その逆もありますね。どちらかひとつ検査するときには、基本的にはIgGの方を行います。
これが、IgGの検査結果のサンプルです。こんな風にして、食べ物ごとにアレルギーがないか、調べることができます。
― 先程お話しされていた乳製品や卵の項目もありますね。すごいですね。これだけの食べ物のアレルギーを調べられるんですね。
日本人は、先程の3大アレルゲンに陽性(反応)が出る方が多いですね。中には、ほとんどすべての食べ物に反応が出てしまう方もいらっしゃいます。それを、「リーキーガットシンドローム」といいます。「腸漏れ症候群」です。
人はだれでも、「カンジダ」というカビを持っています。このカビは、口腔の粘膜や生殖器、腸などに存在しています。例えば、抗生物質を摂ったときや、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れたときなどに、そのカンジダが増殖し、腸の炎症の原因になります。すると、腸がスポンジのように穴だらけになって、本来は通さないような大きな分子もすり抜けるようになってしまうんです。
ちなみに、カンジダは糖質が大好物です。糖質の多い食べ物の摂り過ぎや、ビール・日本酒をよく飲まれる方は、注意した方がいいですね。
― 「腸漏れ症候群」は初めて聞きました。私はパンやごはんが好きで、お酒も嫌いじゃないので、ドキッとしました。話をお聞きしていると、普段の生活がアレルギーにつながるんですね。アレルギーは遺伝から来るものだと思っていました。
アレルギー発症の誘因で遺伝が関与するのは、ほんの一部ですよ。ほとんどのアレルギーが、環境要因によるものといえます。
アレルギー検査で自分の体質を知ることで、「あ、これはダメなんだな」と、自分に合わない食べ物も分かってきます。そして、自分で情報をキャッチすることも大切です。それも、一方向からだけではなく、色々なところから情報を入れて、トータルで見ることです。
そうすることで、食事法も自然と変わってくるはずです。
分子整合栄養医学のすすめ
― 小笠原 先生は、分子整合栄養医学のドクターでもいらっしゃいます。分子整合栄養医学とは、どんな医学なんですか?
分子整合栄養医学は、アメリカ・カナダで生まれた「栄養療法」です。創始者は、カナダのエイブラム・ホッファー博士という方です。彼は精神科のドクターで、生化学の博士でした。統合失調症やうつ病の患者さんにナイアシン(ビタミンB3)を投与すると症状が改善したと提唱し、一時期は学会から非難囂々(ごうごう)で、異端児扱いされたそうです。
そんな博士と交流を持ったのが、ノーベル賞を2つ受賞しているライナス・ポーリング博士です。ポーリング博士も、現在では常識ですが、ビタミンCは有効な成分で風邪の予防にもなると提唱し、当時の学会ではやはり異端児扱いされていました。
その異端児同士が交流を持って、ビタミン、ミネラルなどの栄養素の大切さを再認識し、栄養素を生化学的な観点で用いて治療に使うようになりました。
例えば、脳内の神経伝達物質、セロトニンなんかはお聞きになったことがあると思います。これらは、元々の原材料はタンパク質です。そして、それらを作るのに、ビタミンなどの他の栄養素が必要になるんです。
分子整合栄養医学とは、その「身体に必要な物質を作るためには、この栄養素が必要だよ」という医学です。
― つまり、体内で「Aというものを作るには、BとCが必要だよ」ということでしょうか。それが、例えば美容面ではどんなことに役立てられるんですか?
例えば、ビタミンCはシミ対策などで、よく知られている美容成分だと思います。ただ、ビタミンCを摂っても、鉄が足りていないと、シミは薄くなりません。メラニン色素を分解するには、鉄も必要なんです。他にも、コラーゲンの生成にもビタミンCが必要ですが、それを働かせるにも鉄が必要になります。
特に、女性は生理がありますから、隠れ貧血で、鉄が不足している方がほとんどです。鉄を摂っておかないと、ビタミンCばかり摂っていても、シミは改善されません。
― ビタミンCがシミにいいのはもちろん知っていましたが、それを働かせるには鉄も必要なんですね!? じゃあ、シミを消そうとビタミンCをせっせと摂っても、鉄が不足していると、あまり意味がないんですね…。自分の身体に、いま何の栄養素が足りていないかが調べることはできるんですか?
はい、調べられます。人はひとりひとり、必要な栄養素の量が違います。その方が、アスリートなのか、デスクワークなのか、クリエイターなのか。ストレスの加減、普段の睡眠時間や運動。それらによって、必要な栄養素が変わってきます。いまの自分に必要な栄養素量を調べることができるのが、分子整合栄養医学です。これは、血液検査で調べます。
分子整合栄養医学では、まずは身体に必要なものを作り出そう、そのためにそれに必要な原材料を与えよう、という考え方が元になっています。
足りていない栄養素は、サプリメントで補うのも、ひとつの方法です。
― アレルギーのお話でもありましたが、分子整合栄養医学も、まずは自分の身体のことを知ることに通じるんですね。
はい。自分の状態を知ることができれば、どんな食事をしたらいいのかも分かってきます。それがスタートラインです。
それには今回ご紹介した2つ以外にも、口の中の粘膜を取って遺伝的な観点から、どんな体質になりやすいか、どのような食事法をするとよいかが分かる検査や、毛髪のミネラル検査で、体内にどんな有害金属が多いのかを調べる方法などもあります。
ただまずは、「アレルギー検査」と「分子整合栄養医学」の2つが基本になると思います。
― 自分の体質を知ることの大切さが、よく分かりました。とても勉強になるお話をありがとうございました。
まとめ
「キレイの先生」編集部です。
Dr.Rika(小笠原 里香 先生)のいらっしゃる「カラダクリニック銀座」では、IgG・IgAのアレルギー検査、分子整合栄養医学の検査も受けられます。
スポーツ選手の方がお越しになられることも多いそうですが、納得です。
話題の食事法をやってみる意識は大切ですが、まずはご自分の体質を検査して、プロのドクターにアドバイスをもらってみてはいかがでしょうか?
(Dr.Rikaのブログでも、健康や美容に関する情報をお届けされています。「Bliss Life by Dr.Rika」も合わせてご覧になってみてください)]
カラダクリニック銀座
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(取材:「キレイの先生」編集部)
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