「キレイの先生」編集部です。
今回のテーマは、「甘酒」です。
糀キッチン の香坂 つぐみ 先生にインタビューさせていただきました。
先生は、日本発酵文化協会の発酵プロフェッショナル・発酵マイスターで、ワークショップで講師をされていて、甘酒の講座も人気が高いそうです。
私は先生へのインタビューまで、甘酒は「初詣のときに振る舞われるもの」くらいのイメージしか持ち合わせていませんでした。
ただ、話をお聞きしていくと、甘酒はとても身体に良く、美容面にも良いことがみえてきました。
甘酒は、どんな飲み物なのでしょうか?
そして、どんな効果・効能を期待できるのでしょうか?
香坂先生に、甘酒の作り方などと合わせ教えていただきました。
目次
甘酒とは
・発酵について
甘酒の効果・効能
・酵素による効果・効能
・ビタミン群・必須アミノ酸・コウジ酸などによる美容効果
甘酒の作り方
・飲料用の手作り甘酒
・料理用の手作り甘酒
・保存時の注意点など
甘酒を料理などに使う
・フルーツ甘酒
・甘酒ドレッシング
・漬け床
・アールグレイ・ほうじ茶などで甘酒を作る
甘酒とは
甘酒は、米に麹(こうじ)を混ぜて発酵させる甘い飲み物で、日本では江戸時代から庶民の飲み物として親しまれてきました。
名前に「酒」とありますが、アルコール分は含まれていません。
甘酒には「酒粕で作る甘酒」と「麹で作る甘酒」の2種類があり、麹で作られた甘酒は「酒」と付きますがアルコール分は含まれていません。
発酵について
甘酒は、発酵食品です。
発酵とは、微生物の生命活動のひとつで、微生物の作用によって食べ物などが分解され変化して、それが人にとって有益であれば「発酵」、有害であれば「腐敗」になります。
「発酵と腐敗は紙一重」といわれますが、どちらも同じ微生物の作用で、人の都合によって「発酵」か「腐敗」かに分かれます。
例えば、納豆は、120度の熱でも死なない強い菌を持ち、腸内環境を整えるのに良い食べ物ですが、納豆を外国に持っていくと「腐った豆」と受け取られることもあります。
つまり、納豆は、日本では「発酵」、外国では「腐敗」になるということです。
また、同じものを食べても、美味しく食べられる方もいれば、お腹を壊してしまう方もいます。
すると、その食べ物は、前者の人には「発酵」、後者の人には「腐敗」といえます。
このように、発酵と腐敗の基準は、その国・地域の食文化や個人によって異なり、微生物の作用が人の役に立つかどうかだけの違いに過ぎません。
発酵について
甘酒の効果・効能
甘酒は、点滴と同じ成分が入っていることから「飲む点滴」といわれたり、麹由来のコウジ酸による美白効果も高いため「飲む美容液」といわれたりします。
私自身、甘酒を日常的に摂り入れるようになってから、肌トラブルがなくなりましたし、夏の強い日差しによる日焼けによる炎症もなくなってお肌が強くなったような実感があります。
それは、身体の内側の粘膜でも感じることで、のどやお腹の調子などが丈夫になったと体感しています。
これらは、甘酒の豊富な栄養によるところも大きいのではないかと思います。
酵素による効果・効能
米麹で甘酒を作るときに欠かせない麹菌は、繁殖するときに100種類以上の酵素(こうそ)を分泌するといわれていて、主なものには「アミラーゼ」や「プロテアーゼ」などがあります。
■ アミラーゼ
米のでんぷんを、甘味のブドウ糖やオリゴ糖に分解する「でんぷん分解酵素」です。米麹から手作りの甘酒は砂糖を加えず作りますが、ブドウ糖やオリゴ糖で甘くなります。
■ プロテアーゼ
米のタンパク質を、旨味のアミノ酸に分解する「タンパク質分解酵素」です。
甘酒は、こうした酵素の働きによって、お米よりも甘くて旨味のある飲み物に仕上がります。
また、甘酒を飲むことで食物酵素を補え、体内の消化酵素を節約できて美肌などにもつながっていきます。
酵素による効果・効能
「キレイの先生」編集部です。人の体内で作られる酵素は、食べ物の消化に必要な「消化酵素」と、それ以外のすべての生命活動に必要な「代謝酵素」に分けられます。体内の酵素の生産量は決まっていて外から補うこともできないため、代謝酵素を増やすには、消化酵素に使われる分を節約するしかありません。
そこで、生の食べ物に含まれる食物酵素を摂ると、食べ物の消化を助けてくれて消化酵素の節約になり、その分を代謝酵素に回せるようになります。代謝酵素は皮膚の新陳代謝などにも必要なものですので、甘酒で食物酵素を補うことで美容にもつながっていきます。
酵素について
ビタミン群・必須アミノ酸・コウジ酸などによる美容効果
甘酒は、100種類以上の酵素の他に、天然型ビタミン群や必須アミノ酸などを豊富に含んでいて美容面でも多くの効果が期待できます。
■ ビタミン
甘酒は、発酵する過程で、吸収率の高い天然型ビタミン群が生成され、主にビタミンBが多く含まれています。
■ 必須アミノ酸
人の身体の細胞を作る成分となっているのが「アミノ酸」で、例えば皮膚を構成するタンパク質は20種類のアミノ酸が結合して出来ているのですが、その中で、体内で生成することができず食べ物から摂る必要のある「必須アミノ酸」が9種類あります。甘酒には、その9種類すべてが含まれています。
■ コウジ酸
麹由来の「コウジ酸」は、麹菌が糖を分解することによって生成される成分で、活性酸素を除去したりメラニン色素を除去したりする作用があって美白効果が期待できます。日焼けやシミなどにもおすすめで、化粧品にも配合されていたりします。
■ りんご酸・オリゴ糖・食物繊維など
りんご酸・オリゴ糖・食物繊維などは、腸内細菌のエサとなって腸内環境を整えてくれる作用があります。腸内の善玉菌が増えて免疫力も高まると、肌トラブルの改善にもつながりますし、お通じが良くなることで太りにくい体質を作ることもできます。
■ ブドウ糖
ブドウ糖は、人の生命活動のエネルギー源として重要な栄養素で、疲労回復などにも役立ちます。
こうした甘酒に含まれる栄養は、身体への消化吸収が早いので、江戸時代には甘酒は夏バテ予防によく飲まれていました。
甘酒は疲労回復にもなり、栄養ドリンクのような効果もあります。
麹の美白効果について
甘酒の作り方
甘酒は市販されているものも良いですが、手作りしたものもおすすめです。
市販されている甘酒は、流通の過程で味の変化を防ぐために加熱殺菌され、ビタミンが変成したり酵素も失活(働きを失ってしまうこと)したりしている場合もあります。
手作りの「生甘酒」でしたら、酵素や新鮮なビタミンが生きていて、発酵による味の変化を楽しむこともできます。
甘酒は飲むだけではなく料理などにも使うことができ私は自宅では、甘酒を「飲料用」と「料理用」で分けて手作りしています。
飲料用の手作り甘酒
飲料用の生甘酒は、米麹に加えて、お米を入れて甘さを調整します。
■ 材料
・(粥)米 1合
・(粥)水 360cc
・米麹 2合(約200g)
・水 600~900cc
* 生米麹を使う場合は水を600cc、乾燥麹を使う場合は900ccを用意します。乾燥麹は水に戻す必要があるため、水が多めに必要になります。
■ 作り方
1) まずは粥から作ります。米1合と水360ccで、硬めの粥を炊きます。
2) 粥に水(600~900cc)を加えて、よく混ぜて冷まします。
3) 60度前後になるまで冷ましたら、米麹を加えて混ぜます。
粥が熱いうちに米麹を加えると麹菌が失活してしまうので、麹は粥が60度前後まで冷めてから加えるようにしましょう。
4) 炊飯器の保温モードでふたを少し開けて、濡れた布巾で覆います。
甘酒作りでもっとも大切なのがこのときの温度管理で、温度を55~60度に保てるように、一時間ごとくらいにふたを開けて混ぜて、時々温度を確認するようにしましょう。
途中、温度が60度を超えるようでしたら、炊飯器の保温モードを一旦切って温度が下がったらまたスイッチを入れるなどして、温度を管理します。
最近の高機能の炊飯器はすぐ温度が上がるようになっているので、そのときは皿を釜の下に敷いて温度を調整するのも、ひとつの方法です。
これで6~9時間保温して、甘くなったら甘酒の完成です。
料理用の手作り甘酒
料理用の生甘酒は米麹だけで作り、飲料用のものと比べると、麹の味や香りが濃く出て甘みも強く、お料理の砂糖代わりにして使うことができます。
ダイエットにも良いですし、デザートに甘酒を使えば、砂糖ではないので罪悪感も少なく楽しむこともできますね。
■ 材料
・米麹 2合(約200g)
・水 200~300cc
* 生米麹を使う場合は水を200cc、乾燥麹を使う場合は300ccを用意します。
■ 作り方
1) 米麹に70度前後のお湯を加えてよく馴染ませます。70度前後のお湯なのは、米麹を混ぜたときに温度を60度くらいに保つためです。麹菌は、温度が高すぎると失活し、低すぎると発酵しませんので、温度管理がとても大切になります。
2) 炊飯器の保温モードでふたを閉めずに濡れ布巾で覆い、4~5時間、温度管理をしながら保温して、甘くなったら出来上がりです。温度管理の方法は、飲料用の作り方と同じです。
料理用の甘酒は、飲料用と比べると短めの時間で出来上がります。
保存時の注意点など
手作りした甘酒は、冷蔵庫で保存し、約1週間~10日くらいを目途に使い切るようにしましょう。
保存するときは、さびにくいホーロー・プラスチック・ガラス容器などがおすすめです。
密封容器は、中にガスがこもるのでおすすめできません。
また、今回は炊飯器での甘酒の作り方をご紹介しましたが、ヨーグルトメーカーをお持ちであれば、保温の温度・時間を設定でき、温度管理をしなくても簡単に甘酒を手作りすることができます。
後は、スープマグでも、少量でしたら甘酒を作ることはできます。
ただ、スープマグは、中の温度が下がりやすいため、保温しながら作るようにしましょう。
甘酒の飲み方
甘酒は、発酵する過程で、米のでんぷんが、脳のエネルギー源になる「ブドウ糖」に分解されます。
甘酒はブドウ糖を素早く吸収することができ、脳にダイレクトに届けられるため、朝の「これからスタート!」というときに甘酒を飲むと頭がすっきりしておすすめです。
1回の量はお猪口1杯くらいで、一日の量の目安は200ccです。
夜寝る前に甘酒を飲むと、糖分で太ってしまう原因になるためあまりおすすめはしていません。
甘酒を温めて飲むときは、(ビタミンが変成したり酵素が失活したりしない)60度以下の温度に抑えるのがおすすめです。
また、甘酒で血糖値が上がる場合もあるので、糖尿病などの持病をお持ちの方は、医師に相談しながら量や飲み方にご注意してほしいと思います。
甘酒を料理などに使う
甘酒は、飲む以外の活用方法があるのも魅力です。
料理用の甘酒は、調味料として使うことができます。
料理やデザートの砂糖代わりに使え、白砂糖に抵抗のある方にもおすすめです。
フルーツ甘酒
甘酒に刻んだフルーツを混ぜるだけで、「フルーツ甘酒」になります。
それを凍らせて、シャーベットにしてもおいしいです
フルーツ甘酒でしたら、米を加える飲料用と米麹だけで作る料理用のどちらの甘酒でも、おいしくいただけます。
甘酒にフルーツを一晩漬けておけば、甘酒の酵素やフルーツの栄養分などが合わさって、食べたときに消化されやすくなりますし、栄養価も上がります
ただ、フルーツの種類によっては、色落ちしたり変色したりして見栄えがきれいではなくなることもありますので、注意も必要です。
フルーツ甘酒には、食物繊維が豊富で色落ちしないパイナップルや桃などの缶詰がおすすめです。
甘酒ドレッシング
甘酒ドレッシングでサラダを食べれば、甘酒と生野菜の栄養・酵素を一緒に摂ることができます。
ドレッシングは酢を入れて作りますが、酢も発酵食品でクエン酸などの栄養が豊富で、それらを一緒に摂れるのも良いですね。
甘酒ドレッシングには、料理用の甘酒を使います。
■ 材料
・甘酒(麹だけで作った料理用) 100g
・米油 100g
・米酢 25g
・玉ねぎ 25g
・塩 小さじ1
・コショウ
■ 作り方
すべての材料をミキサーにかけて、とろみがついたら出来上がりです。
甘酒ドレッシングは、甘いマヨネーズのようなドレッシングです。
卵は入っていませんので、普段マヨネーズを食べられない卵アレルギーの方でも安心です。
漬け床
甘酒を漬け床に使っても、おいしい漬け物が簡単に作れます。
野菜を塩でもんで水分を切ってから、甘酒に30分~1時間くらい漬けるだけで、旨味のあるお漬物になります。
3~5日間くらい漬けると野菜が酵素で分解され、さらに旨味が出てきます。
使うのは、料理用の甘酒がおすすめで、漬け物は1週間くらい保存が効きます。
アールグレイ・ほうじ茶などで甘酒を作る
甘酒は、水の代わりにアールグレイやほうじ茶などを使って手作りすることもできます。
アールグレイなどは、濃く煮出して渋めのものをお使いになるのがおすすめで、風味の変わった「変わり甘酒」に仕上がります。
まとめ
「キレイの先生」編集部です。
甘酒は「飲む点滴」や「飲む美容液」といわれるほど栄養が豊富で、健康面はもちろん美容面でも多くの効果・効能を期待できます。
今回のインタビューで、香坂先生から手作りの料理用の甘酒をプレゼントいただきました(先生、ありがとうございました!)
甘酒をフルーツにかけると、シロップのようで本当においしかったです。
こんなにおいしくて、健康や美容ににも良いのですから最高ですよね!
私もすっかり甘酒のファンになってしまいました。
皆さまも、普段の生活に甘酒を取り入れてみてはいかがでしょうか?
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(取材:「キレイの先生」編集部 文:糀キッチン 香坂 つぐみ 先生、「キレイの先生」編集部)
* 2016年6月13日に公開した『甘酒のすごい美容・美肌効果!活用法に合わせた2つの作り方』を再編集しました。