最近、「断食」が話題になることが増えました。芸能人やモデルの方が、プチ断食をしている、という話を耳にすることもあるかと思います。私も5日間の断食を行い、断食を終えて5日間の回復食後に、お肉を食べたとき、お肌がぐんと潤ったことがあります。断食によって、潤いのあるお肌になったのは、私も驚きでした。なぜ断食が美肌につながったのかを、アーユルヴェーダの観点から考えてみたいと思います。
アーユルヴェーダでは病気を未然に防ぐことを考える
(アーユルヴェーダについては、「アーユルヴェーダって何? 美容法? いいえ、もっと広く…」をご覧ください)
断食について、アーユルヴェーダの観点から考えるときのキーワードが、2つあります。
「未病」と「アーマ」です。
未病とは
未病とは、その言葉の通り、まだ病気にはなっていないが、病気に向かっている状態のことをいいます。
例えば、病院に行くほどではないが体に不調を感じる、風邪の予兆といったものがありませんか? 簡単にいうと、そんな状態をイメージしてもらえればと思います。
アーユルヴェーダでは、その未病から病気につながらないようにしたり、そもそも未病にならないようにしたりする考えがあります。
アーマとは
アーマは、聞きなれない言葉だと思います。アーユルヴェーダでは、腸に入った食べ物が消化されず残っているものを「アーマ」といいます。
アーマ(未消化物)が腸に残っていると、老廃物がたまって、未病につながってしまいます。
アーユルヴェーダでは、食べ物を消化して、きちんと排出し、アーマ(未消化物)を残さないことが、体内がきれいでいるために、とても大事と考えられています。
断食が美肌・美容にも良い理由
断食では、固形食をとらず、水分のみをとります。当然、胃や腸には、なにも入っていない状態です。
通常、食べ物を食べると、腸で必要な栄養素や水分を吸収し、吸収されなかったものが排便されます。では、胃腸になにも入っていないと、どうなるのでしょうか?
断食で胃腸を本当の意味で空にする
食べ物を食べなかったからといって、腸には、「まったく」なにもないわけではありません。それまで、便として排出されずに腸にたまってしまった「宿便」というものがあります。
断食して食べ物を入れないと、今度はその宿便が排出されるようになるのです
ご紹介したように、アーユルヴェーダでは、食べ物がうまく消化されず、未消化物・老廃物がたまって体に残ったものを「アーマ」と呼び、未病の原因と考えられています。胃腸に消化されず残っている食べ物もアーマなら、腸に長らくとどまっている宿便もアーマといえます。
胃腸をきれいにし、リセットするのが断食です。
私は数年前、甲殻類にあたったことがあり、その後、便秘になったり、下痢をしたりと、お腹の不調が数ヶ月に渡って続き、それが普通になってしまった時期があったのですが、そのときに5日間の断食を体験し、断食後にはすべてリセットされたように、元に戻っていました。むしろ、以前より良くなっていました。
それも、断食によって、腸の不調がリセットされたからでしょう。
胃腸がきれいになって美肌に
冒頭でご紹介したように、私は5日間断食をして、おかゆなどの回復食を経て(断食の直後は、通常の食事ではなく、負担の少ない回復食を食べます)、お肉を食べました。すると、お肌に潤いがぐんと表れました。お肉から潤いが与えられたのです。
それも、きっと断食によって、身体の中がきれいになって、吸収力が良くなっていたからなのでしょう。
スタッフでも、アトピーをお持ちの方がいるのですが、その方もお肌にトラブルが出ると、プチ断食を行うといいます。すると、お肌もきれいになるそうです。
アーユルヴェーダは、身体が健やかであることを目指します。そして、内側(体内)の美しさが、外側の美しさにつながります。
断食によって胃腸がきれいになることで、お肌の美しさにも表れたのではないかと思います。
どこにエネルギーを使うのかという考え方
また、消化というのは、体の働きの中でも、もっともエネルギーを使うものです。
人間のエネルギーにも限界がありますから、食べ物を消化するのにエネルギーを使うと、ほかのところに回せるエネルギーはその分、減ってしまいます。
例えば、お腹が減っていると、頭が冴えてくることはありませんか? それは、胃腸に食べ物が入っておらず、消化にエネルギーを使用していないからともいえます。
少し話がそれてしまいますが、風邪をひいたときに、食欲がないのに、「元気になるために食べなきゃ!」と思ったことはありませんか?
風邪のときに無理をして食べると、体を修復するために使われるはずのエネルギーが消化に回されて、逆効果になることもあります。
「食欲がない」というのは身体からのサインです。食べなくても良い状態だから食欲がないとも取れます。
そのときは胃腸を休めてあげて、身体の修復に必要なエネルギーを使うと良いでしょう。
お肌の再生(修復)力にエネルギーを回す
それは、お肌も同様です。お肌を再生(修復)するのにも、エネルギーが必要です。食べ物の消化にエネルギーを使っていれば、お肌の修復力に回せるエネルギーも限られてきてしまいます。
夜の22時から2時の間は、「お肌のゴールデンタイム」といわれています。お肌はこの時間帯に、もっとも再生(修復)が働きます。
そのときに、お腹に食べ物が残っていると、消化にエネルギーを取られてしまいますから、夜の22時以降はできるだけ食べ物をとらないようにするのはもちろん、それまでにお腹が空になっているのが好ましいでしょう。
断食で食べ物の消化にエネルギーを使用しない
断食は、固形物をお腹に入れませんから、消化にエネルギーを使用することはありません。その分、ほかのところに(お肌の再生力にも)エネルギーを回すことができます。
そのことも、断食が美容につながる一因なのかもしれません。
まとめ
断食は、身体の中をきれいにして、それが美肌にもつながることを、私は自分の経験から実感しています。
身体の中からきれいになりますから、免疫力も高まり、断食後の食事も美味しく感じたりするなど、お肌以外にも良い影響があります。
断食も、「何日間も行うものでは?」と難しく考える必要はありません。一日、もっといえば、半日でも良いのです。そのくらいの断食であれば、それほど難しくはありません。
体内がきれいになると、それが美容にもつながりますから、胃腸を空にしてリセットしてみることも、お試しになっても良いと思います。
※私のように、ある程度の日数で断食を行うときは、必ず知識のあるプロの方の指導に従うようにしてください。
(取材:「キレイの先生」編集部 文:スタジオ For me AYANO 先生、「キレイの先生」編集部)