「キレイの先生」編集部です。
今日、通勤電車の中で、手の甲のある場所を押していました。
きっと、周りのだれも気付いていないでしょう。
ただこれは、ちょっとした美容法なんです。
手の甲には、「合谷(ごうこく)」というツボがあり、美肌に効果があるといいます。それだけではありません。「合谷」は、万能ツボといえるそうです。
今回、Private Salon éclat の南雲 わこ先生に、「ツボ」について話をお聞きしました。
ニキビに良いツボも教えていただいたのですが、それも奥深い内容だったので、それは後編として別にまとめさせていただきます。
この前編では、ツボの基本的な考え方から、美肌にも良い「合谷」の場所や押し方を解説いただきました。
南雲 先生には丁寧におまとめいただいたので、分かりやすいと思います(南雲 先生、ありがとうございます!)。
美肌に良い「合谷」は、どの場所にあるのでしょうか?押し方は、どうすれば良いのでしょうか?
南雲 先生に教えていただきました。
目次
ツボとは
・経絡について
・経絡とツボ
ツボの押し方
・押し方のポイント
・ツボ押しのNG
美肌に効果のあるツボ「合谷」
・合谷の場所
・肌荒れに良いツボ
・合谷の押し方
ツボとは
ツボの正式名称は、「経穴(けいけつ)」といいます。
ツボ(経穴)は、もっとも古い文献では、2,000年以上も前のものにも記されています。
誰が作ったか発見したかは定かではありませんが、今のような科学技術のない時代から莫大な症例をもとに生み出された、まさに経験医学といえます。
長い歴史の中で育まれ、現代へと受け継がれてきました。
経絡について
ツボを理解するのに欠かせないのが「経絡(けいらく)」です。
東洋医学では、下の3つを、生きる3大要素としています。
・気 (生命活動のエネルギー源)
・血 (体の栄養を与え、滋養する物質)
・津液 (体の水分の総称)
経絡を分かりやすく表現すると、「気」と「血」が流れる道筋のことです。経絡は、血管や神経のように目にみえるものではありませんが、人体にとって重要な役割を果たすものです。
主な働きは、下の通りです。
・気や血を行き渡らせて、人体の健全な活動を維持する
・外邪(外からの刺激)の侵入を防ぐ
・体の内側(五臓六腑)と外(体表)を結んでいる
経絡には、主要な12本の十二経脈が存在し、体表では全身を網の目のように分付していますが、身体の内部では特定の臓腑とつながっています。
経絡とツボ
ツボ(経穴)とは、経絡上に存在する皮膚表面のポイントのことで、経絡によって身体の内臓や各器官とつながっていると考えられています。
「経絡 = 電車の線路」、「経穴 = 主要な駅」と考えると分かりやすいと思います。
ツボは、「東洋医学の神秘」といわれていますが、近年はさまざまな研究によって、その実態が少しずつ解明されています。
現代医学(西洋医学)には、「トリガーポイントという概念があります。これは、「痛みの根本となっている場所」という考え方です。
このトリガーポイントとツボを照らし合わせると、重複している場所がとても多いことが分かってきています。
東洋医学的には、体表にあるツボを刺激すると、それは経絡に対する刺激となります。さらには、その経絡がつながる臓腑や組織・器官への刺激となるとされています。
そのため、ツボを刺激することによって、(体の表面から経絡を通じて)関連する臓腑の機能を整えていくことができるのです。
また反対に、各臓腑の変調は、経絡を通じて経穴に現れるとされています。ツボの反応を探ることで、関連する臓腑などの診断点として活用することもできます。
ちなみに西洋医学的には、ツボ(経穴)をトリガーポイントと位置付けた場合、下のように考えることができます。
1. ツボを刺激する
2. その部分の神経が活性化する
3. 情報が中枢神経を通って脳に伝わり、自律神経の司令塔である視床下部を刺激する
4. 視床下部からツボと関連のある臓器や神経などの各器官を刺激して働きが調整される
ツボの押し方
ツボ押しには、「ダイレクトツボ」と「リモコンツボ」を押す方法があります。
■ ダイレクトツボ
痛みや不調の出ている部位にあるツボに、直接刺激を与える方法です。例えば肩こりには、肩にあるツボに直接刺激を与えたりします。
■ リモコンツボ
患部ではないものの、神経や経絡を通して遠隔にあるツボに刺激を与える方法です。内臓の不調や手の届かない場所、炎症のひどい場所には、この遠隔のツボ刺激が役にたちます。
ツボ押しは、ひとつのツボにつき、5秒くらいを2~3回繰り返して押せばOKです。
ツボを押しすぎると、感覚が麻痺したり、炎症をおこしたりします。押しすぎや、強すぎる押圧には注意しましょう。
ツボを正しい位置や角度で押せば、それほど力を入れなくても、とても気持ちの良い感覚が得られます。
押し方のポイント
ツボ押しには、2つのポイントがあります。
【ポイント1】呼吸法
ツボを押す前に大きく息を吸い込み、息を吐きながら押していきましょう。押している間はずっと息を吐き続けて、力を抜くときに息を吸い込みましょう
【ポイント2】力の入れ方
リラクゼーション目的の場合は、上記の呼吸にあわせて徐々に圧を加えて、「気持ちいい」と感じたら徐々に力を抜いていきましょう
不調解消目的の場合は、上記の呼吸にあわせて徐々に力を入れて、「痛いけど気持ちいい」というところまで押したら、そのまま5秒キープしてみましょう。そして徐々に力を抜いていきます。
ツボは手で押さなくても、ツボ押し用の棒などが健康グッズ売り場で売っています。
また、ツボの周辺をやさしく摩る(さする)、温めるという方法でも、刺激を与えることができます。
ツボの周辺を温めるときは、蒸しタオルやドライヤー、使い捨てカイロなど、身近なもので大丈夫です。他にも、千年灸など、ドラッグストアに売っているお灸を使用する方法もあります。
ツボ押しのNG
体調が普段と比べて明らかに違う場合は、ツボ押しは避けるか、医師などに相談してから行うようにしましょう。
例1) 妊娠中(特に安定期前)
足首の周りには、「陣痛を促すツボ」や「逆子を治すツボ」などがあります。そういったツボを刺激すると、影響が出てしまう可能性があります。
例2) 飲酒時・飲酒後30分以内
ツボを刺激すると、血流が良くなります。それによって、アルコールの回りが早くなる場合があります。
例3) サウナに入った直後
サウナに入った直後は、身体が活性して循環が良くなっています。その状態でツボを刺激すると、かえって循環が良くなり過ぎてしまう可能性があります。入浴後は良いですが、サウナに入った直後は、ツボ押しは避けた方が良いでしょう。
例4) ツボ周辺に怪我や火傷などの異常がある場合
例5) 発熱時・手術後
美肌に効果のあるツボ「合谷」
では、顔のトラブルに効果があり「美肌のツボ」として重宝するものをご紹介させていただきます。
それが、「合谷(ごうこく)」です。
合谷の場所
合谷は、手の甲側で、人差し指の骨のきわにあります。
手の甲を上にして、人差し指の骨のきわを下(身体)の方にたどっていきます。
すると、親指の骨と接する部分に当たると思います。
そこの凹みを押すと、ツーンとくる感覚が走ると思います。痛気持ちいいような感覚を得られれば、そこが「合谷」に当たります。
肌荒れに良いツボ
合谷は、東洋医学の古い文献でも、顔トラブルに良いツボとして記されています。
また、万能ツボともいえ、胃腸の不調などにも効果があります。
顔トラブルは、胃腸から来る場合も多いです。それも、合谷が美肌に良いといわれる理由にあるのではないかと思います。
編集部のコメント
「キレイの先生」編集部です。
「肌は腸の鏡」という言葉もあります。例えば、腸の不調で便秘になったりすると、ニキビなどの肌荒れの原因にもなります。
腸の状態がお肌と関係していることは、このサイトでも何度か取り上げました。「便秘でニキビ?吹き出物?むくみ?便秘で肌荒れが生じるワケ」などを合わせてご覧になってみてください。
合谷の押し方
合谷は、親指をツボに当てて、人差し指の骨のきわに引っかけるようにして押し上げます。
合谷は、左右の手にあるので、両手とも同じように行いましょう。
ツボ押しについて
ツボ押しは、未病*に対する最高の処方箋です。
これから起こるかもしれない身体や肌のトラブルを未然に防ぐことは、東洋医学の基本的な考えです。
ツボ押しは、いつでもどこでも気軽に行え、いろいろな症状に対応できるのが最大のメリットです。
とはいえ、ツボ押しだけで美肌や健康な体を手に入れようと思うのは、やはり難しいことです。
そのため、きちんとしたスキンケアと規則正しい食生活などのプラスアイテムとして、ツボ押しを気軽にご活用いただければと思います。
* 未病とは、「病院の検査では異常なしだけど、なんとなく調子が悪い」といったような、放っておくと病気へと進む可能性のある状態のことをいいます。
まとめ
「キレイの先生」編集部です。
私が通勤電車の中で、手の甲を押していた理由がお分かりいただけたでしょうか?
そうです、「合谷」を押していたのです。
手の甲のツボを押すだけで、美肌の効果があって、肌荒れにも良いのは嬉しいですよね。
いつでもどこでもできる美容法です。
ひとつ気を付けたいのは、押し方ですね。南雲 先生に教わったように、人差し指のきわに引っかけるようにして押し上げましょう。
南雲 先生には、「ニキビにおすすめのツボ」についても教えていただきました。
こちらは、後編でまとめさせていただきます。ニキビの体質別に解説いただき、とても興味深い内容です。
是非合わせてご覧になってみてください。
* 南雲 先生の後編の記事は、下からご覧ください。
(参考文献:東洋療法学校協会『東洋医学概論』、ナツメ社『東洋医学の教科書』、高橋書店『ホントのツボがちゃんと押せる本』、池田書店『中医アロマテラピー 家庭の医学書』)
(取材:「キレイの先生」編集部 文:Private Salon éclat 南雲 わこ 先生、「キレイの先生」編集部)